第2部 礼典諸式 第16節 葬儀一般に関する注意 葬儀に関する諸式は、納棺式から始まるが、まず一般に関する注意事項21項目を左に挙げることにした。 1 危篤の病人か臨終の近い病人があったとき、牧師は家人と打合せておいて、すぐ連絡のとれるようにしておくのがよい。また臨終に間に合ったときなどは、詩篇116篇を読み、短い臨終の祈りを捧げる。要求によっては、洗礼式、もしくは最後の晩餐式を行う。この場合は急を要するので、按手礼を受けていない伝道師や平信徒であっても行い得ることになる。ただし、事後その旨を牧師に報告することを忘れてはならない。 2 召された直後は死体の始末のしやすい時であるから、硬直しないうちに処置すべきである。看護婦がいたらその事を一任するのが一番よい。看護婦不在の場合は、婦人伝道師か老人たちを牧師が指導して行う。まずアルコールと脱脂綿とを準備し、体全体を丁寧にふき取り、口腔、鼻腔そのほか肛門に至るまで、アルコールか消毒薬を脱脂綿にひたして詰め込むこと。その後衣服を取り替え、両手を胸に組合せ、まぶたを閉じさせる。もし下着がとれない場合は、はさみで切り取る。ひげがのびているときはよくそること。若い婦人や子供の場合は、ほお紅、口紅をつけて最後を飾る。夏期には香水をふりかけるとよい。病気によっては棺の底に油紙かビニールを敷く必要がある 3 家人を励まし、医師の死亡診断書を取って、蒔市町村役場への届出を終り、葬儀屋と打合せて告別式の日時を決定することが大切である。クリスチャンは「友引」に関して無関心だが、火葬場はこの日休みであるから、それらのことも考慮を要する。 4 死亡通知の発送準傭を早くすること。(通知書の見本は付録にある) 5 白宅出棺の場合はそのままでよいが、病院で死亡したときには病院の死体安置所で簡単な密葬告別式をして直ちに火葬にすることもある。また病気と季節によっては急いで密葬し、お骨にした後、適当な時に自宅か教会で告別式を施行する。これらは家人とよく相談すべきである。 6 葬儀に関しては、司式者も会衆も言行を慎むこと。たとえば、クリスチャンは祈るとき「感謝します」という習慣があるので、葬式のときの祈りにも「感謝します」の連発のおそれがある。この場合は、多くの未信者も来会していることだから注意しなければならない。「感謝します」と言う代りに「お祈りします」と言うのがよいと思う。それゆえ、本書の順序の最後を祝祷としないで終祷とした。 7 教会か大会場での告別式には、最前列に遺族の人たちの着席する場所を定めておく。一般会葬者着席後、牧師を先頭に故人の近親者が遺骸もしくは遺骨と写真とを運び、その後に他の近親者が続いて、奏楽中に入場する。この時、先頭の牧師は詩篇23篇を厳かに高唱しつつ指定の位置に進み、それぞれ着席することもある。 8 教職者が多数出席のときは、それぞれ分担して葬式のご用にあたるとよい。その時の終祷には、年長か年功の教職者があたるのが適当である。 9 賛美の歌は故人の愛唱歌を第一に選び、そのほかは故人の信仰に適した歌を選定する。 10 場合によっては葬儀委員長を人選して一切を萎ねることもある。 11 故人の履歴は親しい友人が読むのがよい。婦人や子供の履歴など、取り立てて読む必要のないときは、説教者が自分の説教中に取り入れて話すこともある。履歴は故人にふさわしく作られるべきである。 12 弔辞は講壇の上から述べることもあり、その下で述べることもある。 13 親戚代表のあいさつは、まず葬儀委員長から始めて司式者、次に説教者、弔辞者の順序に述べた後、一般会葬者に及ぶようにする。また葬儀委員長が代ってあいさつすることもある。 14 最後の告別の仕方は、会場の大小、会葬者の多少によって異なる。 遺骸の顔を見るのは近親者に限るものとする。一般会葬者は、あらかじめ用意されてある小花を1人1人が供える。そのときは花受けを置き、牧師から渡された花をそこに供える。その間、奏楽をしてもらうか、聖歌348「今さりゆくなれを」を歌うとよい。会葬者多数で時間のかかるような場合には、一同が起立して黙祷、黙礼で終ることもある。 15 クリスチャンは死者を偶像化して拝んではならない。供物や花輪等を未信者から受けたときは、礼を失わないように処理すべきである。旧来の風習を破ることはなかなか容易でないが、あらゆる点で偶像を離れるよう心掛けるとともに、信仰のあかしをすべてのことにたてていくよう努力すべきである。写真まで否定する人もあるが、そうまでしなくてもよいであろう。焼香はしてはならない(仏教式、神道式の葬儀に参列した場合にも、焼香や玉ぐしをささげることを避け、黙祷をもってその意を表すべきである)。 16 その土地の風習、会場の様子で臨機応変の処置をとる必要がある。ことに田舎ではその組内の人々が葬式を執行し、遺族を客扱いにする所もあるから、その組内の人々とよく懇談し、了解を得ておく必要がある。またキリスト教だからといって何も相談しないで行うと、かえって反感を買うおそれがあるから、慎重に処理すべきである。 17 葬儀は故人にとって、最後に与えられた信仰のあかしのよい機会である。いろいろの関係で、多くの未信者、親戚縁者が集まる時であるから、諸式の執り行いの態度においても、説教においても考慮を要する。 18 牧師は宗教家であるから、未信者から葬儀を依頼されたときにも、これを行う義務がある。牧師不在で急を要するときは、教会の役員、または平信徒が葬儀を執行することもできる。 19 未信者の場合は、祈りにも説教にも、未来の問題に重点をおくべきであって、伝道の書3章11節の聖句は最も適当と思われる。 20 棺の上に十字架と花輪を置くことがある。花輪は冠の意味である。これは花屋が作っても、手製のものでもよい。教会に黒い棺覆いがあれぱ便利である。その他は葬儀屋との打合せによって決めるのがよい。 21 告別式のプログラムは、活版、タイプ、孔版等の印刷を使用して製作する。2つ折にして、表面中央に故何某の告別式順序と書き、年月日と式場の場所をも書く。内側には式の順序を詳細に書き記す。ときには故人の写真を表紙に印刷するのもよい。